経営・管理ビザの基準の明確化

経営・管理ビザの在留資格基準

外国人が日本において事業を起こして事業の経営に従事する場合、その活動は在留資格「経営・管理」に該当します。

「経営・管理」の審査では下記が重要なポイントです。

1 事業を営むための事業所の確保

2 事業の継続性

但し、1についてはベンチャー企業等は設立当初は規模が小さいことや少人数で運営可能であること等から、住居として使用している施設を事業所と定めて事業を行う場合があります。2については、事業の赤字決算等が事業の継続性に疑問を生じさせることがありうる反面、諸般の事情により赤字決算になっても事業の継続性に支障がない場合も十分考えられます。そのため、出入国在留管理庁は1及び2について、ガイドラインを示しております。

1 事業を営むための事業所の確保

住居として賃借している物件の一部を使用して事業が運営されるような場合には、(a)住居目的以外での使用を貸主が認めていること、(b)法人が事業を行う設備を備えた事業目的占有の部屋を有していること、(c)公共料金等の支払に関する取り決めが明確なこと、(d)会社の存在が認識できる標識が掲示されていること等が必要となります。

(a)は賃貸借契約書で判断されるため、法人名義での契約が望ましいです。

(b)の事業で使用する部屋は生活部分(キッチン、リビング等)を通過せずに出入りできる必要があります。

(c)公共料金等の支払については、何割を会社の経費にするか会計の担当者(税理士さん等)に相談すると良いかもしれません。

(d)会社の入口と郵便受け等に会社を識別するための標識を設置すると良いでしょう。

2 事業の継続性

事業活動においては様々な要因で赤字決算となり得るため、単年度の決算状況を重視するのではなく、貸借対照表の状況等を踏まえて総合的に判断されます。

直近2期の決算状況において

(1)直近期又は直近期前期において売上総利益がある場合

a 直近期末において欠損金が無い場合

直近期末が黒字の場合、事業の継続性に問題はないものと認められます。

b 直近期末において欠損金がある場合

 1 直近期末において債務超過になっていない場合

事業計画、資金調達等の状況により、将来にわたって事業の継続が見込まれる可能性を考慮し、今後1年間の事業計画書及び予想収益を示した資料の提出を求められ、事業が行われていることに疑義があるなどの場合を除き、原則として事業の継続性が認められます。

 2 直近期末において債務超過であるが、直近期前期末では債務超過となっていない場合

債務超過が1年以上継続していない場合に限り、1年以内に具体的な改善(債務超過の状態でなくなること)の見通しがあることを前提に事業の継続性を認められます。

 3 直近期末及び直近期前期末ともに債務超過である場合

債務超過が1年以上継続している状態の場合、事業の存続について厳しい財務状況が続いていること及び1年以上改善がされていないため、原則として事業の継続性が認められません。

※債務超過とは負債が資産を上回った状態

※売上総利益(粗利)とは売上高から売上原価を引いた金額

(2)直近期、直近期前期において共に売上総利益がない場合

2期連続して売上総利益がないということは、通常の企業活動を行っているとは考えられず、会社が主たる業務を継続的に行える能力を有していると認められないため、原則として事業の継続性が認められません。

また、上記(1)、(2)に加えて事業者としての下記義務の履行がなされていないと消極的な要素として評価されます。

・租税関係法令の遵守

 国税(所得税、法人税等)及び地方税(住民税等)

・労働関係法令・社会保険関係法令の遵守

 雇用する従業員の労働条件が労働関係法令に適合

 社会保険等の加入手続き及び社会保険料の適切な納付

在留資格「経営・管理」の審査は様々な観点から、会社と経営者の適格性が審査されるため、適切な人に相談して、不安要素を解消してから申請を行うのが良いでしょう。